「う、うん。…蘭ちゃんの予定と、余裕があったら……一緒にどうかなって」



わが校は、毎年8月末に文化祭がある。夏休みが開けてすぐのイベントで、1年生の時も生徒全員が目まぐるしくバタついていたような記憶があった。

もちろん利点もあって、後夜祭でパフォーマンスをする人たちは夏休みという長い時間を使って多く練習時間を確保できたり、私服で登校できるなどの文化祭準備のための特別ルールも設けられたりするのだ。

例年、夏休みから文化祭にかけてカップルが多く誕生しているという噂も、1年生の時に小耳にはさんだことがあった。



「もちろん、無理にとは言わないよ。でも、……蘭ちゃんと、もう1回文化祭回りたくて」



杏未が肩を縮めて俯いた。

もしかしたら、夏休み中に何度も言おうとしてくれていたのかもしれない。勇気をふりしぼって私にそう提案してくれたと思うと、それだけで感情が込み上げてきた。