気づいたら私たちはオレンジに染まった空の下を歩いていた。カフェでどんな会話をしたのか、自分が話したことはひとつも思いだせなかった。

楽しい時間というのはあっという間で、綺と超える夜と同じくらい、時の流れが速かった。



瞼が少しだけ重くて、鼻が詰まっていた。泣いたせいだ。杏未も同じだったと思う。お店の中だったから泣くに泣けなくて、ふたりで涙をこらえながら話した。



「蘭ちゃん、今日はありがとう」

「…うん」

「少しずつでいいから、……また、前みたいに一緒に過ごせたらうれしい」

「うん、…あたりまえじゃん」



高校3年生の夏。ぽっかり空いた1年半の過去はもうどうすることもできないけれど、青春はまだまだ終わらない。残された高校生活を、今度こそ後悔なく前を向いて歩いていきたいから。


当たり前に一緒にすごせることを、私は心から願った。