「……杏未」

《蘭ちゃん》

「あみ、……杏未…?」

《うんっ、蘭ちゃん…っ》



名前を呼ぶ以外できなくなるほど、頭が真っ白になった。手紙に番号を記載したのは私で、かけてきてほしいとも思っていたのも確かだったけれど、いざ本当にかかってくると手も声も震えて、感情が高ぶって言葉に詰まってしまう。


私は彼女に言いたいことが沢山あった。謝りたいことも、聞きたいこともたくさんあったのだ。学校に通えなくなる前に杏未とやり残したことも、未来のどこかで一緒にやりたかったことも、数え切れないほどある。


あの時、もっとちゃんと話し合えばよかった。私たち、お互いの心をもっと共有するべきだった。



まだまだ私たちは青くて、これからも未完成なまま生きていかなくちゃいけない。お互いの足りなかったところを補い合って、時々ぶつかり合いながらやっていくしかないんだ。



「杏未……っごめ、ごめんねぇ……っ」



若いとはつまり、武器である。何度でも失敗して、後悔して、自分の中に残る感情を行動原理にするのだ。相手に何かしらの気持ちを抱くことは、その相手を忘れられないことの証明だから。

私の自慢の母が、そう教えてくれた。





私はずっと、杏未の目を見て話がしたかった。