「蘭、ごめんまたせた」
掛けられた声に、空から視線を移す。1週間ぶりに顔を合わせて、感情がこみ上げた。
いつからなのか。もうずっと、綺の顔を見るだけでどうしようもなく泣いてしまいそうになる。
綺は夜がとても似合う人だ。夕暮れ時のオレンジも似合うけれど、初めに会ったのが夜だったせいなのか、綺には夜の暗さや涼しさの方がしっくりくる。
私の隣に腰を下ろした綺が、手にぶらさげていたコンビニの袋からコーラを取り出す。今日もやっぱり600mlの缶だった。
「真夜中さんとこで買ってきたの?」
「うん」
「元気だった?」
「うん。蘭が1週間来てないこと、ちょっと心配してた」
「そっか」
「うん」
短い会話だった。
真夜中さんが働くコンビニには、どうしても夜にしか用がないからこの1週間一度も顔を出してはいなかったけれど、心配してもらえていたのかと思うと、申し訳ない気持ちと同時に少し嬉しい気持ちもあった。「今日帰りに寄ってく」と言えば「そうしな」と言われた。