だからこそ、俺は自惚れていたのだ。


蘭といる時の自分が、いちばん好きだと思えた。自分が何者かになれているような気がしていた。誰かを正解へと導く、神さまにでもなった気になれた。




「俺のことはいい。俺は、大丈夫だからさ。それより、蘭がちゃんと友達と向き合って、物語が動いたらまた教えて」

「…っ、」

「俺の話……いつか、蘭に、聞いてほしいな」



蘭が前に進むことは嬉しい反面、それは焦りにも繋がっていた。俺だけがずっと立ち止まっている。どうにもできないと諦めて、過去(じぶん)と向き合うことを避けている。


いつか がいつまでも来ませんように、と。




「あの、菩薩くん」

「はい?」

「なんでそんなに泣きそうな顔してるんすか」




俺だけが世界に置いて行かれてるみたいで寂しくて、くるしくて、​───消えてしまいたいとすら、思った。