それから数分後。


木製のトレイに、淹れたてのホットミルクが入ったマグカップと、個包装のチョコレートをふたつ乗せた母が戻って来て、それを私の机の横にそっと置いた。



ゴールデンタイムのチョコレートなんて年頃の女の子にとっては天敵だけど、「糖分大事よ」なんて母が笑って言うものだから、今の私にはにきびを気にするよりもずっとずっと必要なもののような気がした。



ミルクチョコレートが舌の上で溶けていく。残った甘味を流すようにホットミルクを口に含むと、なんとなく心が落ち着いた。


机の上に広げた過去の手紙の山。

母は一番近くにあった便箋に手を伸ばし、何気なくそれを見つめた。ふ、と柔らかい笑みをこぼしている。