「皆さん、もう知っているかと思いますが……、佐渡さんが、昨晩、亡くなりました……」

最初に彼女の訃報を聞いたとき、私はクラスメイトたちが「シン……」と担任の北村先生を言葉に耳を傾ける中、「えっ」とそれはもう自分でも不思議なくらい大きな声を上げてしまった。

「な、なんで? うそでしょ……?」

幸いか不幸か、昨日の晩は両親が家にいなかった。有給を使い、二人で旅行に出かけたのだ。だから今朝も、私は家に一人。私は携帯電話もスマートフォンも持っていないため、家にいる時は固定電話しか使わない。
それに加えて、うちはクラスの連絡網や友人宅からの電話に疎い家庭だ。ずっと家に引きこもっていれば、外部からの情報が遮断されるというわけで。
とにかく私は、今朝学校に来るまで、歌の身に起こったことを知らなかった。クラスの友達のほとんどは、昨晩、もしくは朝いちの知らせで、そのことを知っていたというのに……。

「どうして?」
なんで? と独り混乱している最中に、北村先生が私を一瞥してから再度口を開いた。
「佐渡さんは……昨晩入浴中に眠ってしまっていたそうです。それで——」
先生が、涙で言葉の続きをぐっと詰まらせる。
聞かなくたって分かる。
歌は、お風呂で溺れて死んだんだ……。
歌が、こんなにあっけなくこの世から去ってしまったということにありえないくらい衝撃を受けた。
でも、それなのに。
私には、すんすんとすすり泣くクラスの女の子たちの声が、耳障りで仕方なかった。
そして、「先生も、泣くんだ」って、当たり前のことに今更気づいて。
歌が死んでしまったことよりも、クラスで一人だけ事前に何も事情を知らずに登校してしまっただけで、こんなにも居場所をなくしてしまうものなんだと強く強く思った。

「歌ちゃん……」

ぼそりと、呟いたって、誰にも聞こえない。
私の声は、ここにいる全員の悲しみの渦の中に消えてしまうだけだった。