「……見つけた」

葵は店の脇の駐輪場でうずくまっていた。
探すあてなんてなかったから、真っ先に向かって正解だった。
葵は店長の「娘」なのだと、満島くんが教えてくれた。
そして、店の隣が店長の家、つまり葵の実家なのだと。

『店長に紹介されたとき、俺も全然わからなかったんだ。あまりにも高校のときと変わりすぎて』

「熊田葵」は、私のひとつ下の後輩だった。
私が高校2年生のとき、1年の葵がマネージャーとして入ってきた。私が満島くんに告白されて付き合い始めたばかりの頃だ。
かわいらしい子だな、というのが最初の印象だった。小柄で、色白で、目がぱっちりと大きくて、お人形さんみたいな女の子ってああいう子のことだろうな、と。
はじめはミスが多かった葵も、周りに助けられて少しずつ頼もしくなっていった。なんとなくほっとけない存在だったのだ。私は決して面倒見がいいタイプではなかったから、少し離れたところから気にかけているだけだったけれど。
自分より大きな物を運んでいて転びそうになったのを慌てて助けたとき「ありがとうございます」と照れたように笑った顔が、思わず見惚れるくらいかわいかったのを覚えている。
私が葵について覚えているのはそこまでだ。
夏に怪我をして部活に行かなくなって以来、葵には会っていなかった。
私より付き合いが長い満島くんも、卒業後のことは詳しく知らないと言っていた。

聞きたかった。
葵の口から直接、葵の気持ちを。