雨上がりの公園は、夕焼けの下で瑞々しく光っていた。空はすっきりと晴れて、きれいなオレンジ色に染まっている。
だけど私の心は、まだどんよりと雲がかかったままだ。
理由はひとつだった。
満島くんと紗栄子の旅行話を聞いてから、ずっと気分が沈んでいる。
再会した初日にキスシーンを目撃したというのに、まだ覚悟が足りなかったようだ。
旅行に行くくらい2人が親密なのだと、改めて思い知った。
「結局、私、何も変わってない」
いつものようにコーヒーを飲みながら、葵に弱音をこぼしている。
人見知りを直したくて憧れのカフェでバイトをはじめた。けれど実際は人見知りを直すどころか、つまらないことで悩んでばかり。
この話自体つまらないとわかっているけれど、葵が興味深そうに耳を傾けてくれるから、ついあれもこれもと吐き出してしまう。
うーん、と葵が首をかしげる。
「そうかな。変わってると思うけど」
「どこが?」
「バイト仲間ができた。友達もできた。彼氏もできた」
葵があっさりと言ってのけるから、私はおかしくないのに少し、笑ってしまった。
「変わりたいと思って行動したときから、もう変わってるんだよ」
だから、実際どう変わったかなんてどうだっていい、と葵はやけに強い口調で言いきった。
そう言われると、本当にどうでもいいことで悩んでいるな、と思えてくる。
「俺も、そうだったから。ずっと一歩が踏み出せなくて、くよくよ悩んで、同じ場所で立ち止まってた。だけど、思いきって行動してみたら、少しだけ前に進めたような気がしたんだ」
「葵は何を悩んでたの?」
要領を得ない話だったので尋ねてみると、
「また今度話すよ」
とはぐらかされてしまった。
急ぎめで、と言ったのはどっちだ。
ずるいと思ったけれど、話したくないことだってあるかもしれない。無理に聞き出す気にはなれなかった。