いつものようにチャイムが鳴る。
いつもと違って居留守を使わず、玄関で土下座をした両親は3人を中に招き入れた。
リビングに通されたのを察して、真冬は2階の廊下から様子を伺う。
いつものように怒鳴り声を上げようとしたスキンヘッドを諌める声がした。
「(初めて聞く、きっとあの男の声だ)」
感情に任せて声を荒らげることはない。
ただ淡々と冷静に言葉を並べていく男の声は、距離が離れていると聞き取りづらい。
母親のすすり泣く声が次第に大きくなっていく。
「高見さんまで出てくる事態になってんの分かっとんのか」
「す、すみません。申し訳ないです」
黙り込む両親に刺青のおじさんが唸るように言う。
父親がまた平謝りしている光景が目に浮かぶ。
それを黙らせて高見はあくまで静かに問いかけた。
「それで、夏野さんはどう落とし前をつけるつもりで?」
「あ、あんな額のお金、うちにはありません」
「……確か息子がいたはずだな」
「っ、どうか息子だけは…!」
「そう言われても出すもんがないなら労力で払ってもらうしかないな」
「……少々、お待ちいただけますか」
母親は返事もろくに聞かずにバタバタと立ち上がり、リビングを飛び出した。
階段の上に無表情に立つ真冬を見つけ、慌てた様子で駆け上がってくる。