それからヤクザの訪問は昼夜問わず、1週間続いた。
真冬が登校する時間にやってきて、結局学校に行けずに休んだこともあった。
そしてちょうど7日目の夜、真冬の運命が変わった日。
元々小さなヒビがいくつも入っていた家庭は、形を保っているのが不思議な程、ボロボロだった。
あの日は家の中にいても凍てつくような寒さで、真冬は小さな薄い毛布を体に巻き付けて、ガチガチと歯を鳴らしていた。
兄はアルバイトがあると夕方に出掛けてしまって、両親はリビングで明かりもつけずに何やら話し込んでいるようだった。
日が落ちるのが早いな、とカーテンの隙間から窓の外を眺めていると、鋭い殺気を孕んだ視線を感じる。
ハッとした真冬はその場にしゃがみこみ、音を立てないように再び外を盗み見た。
「(あの男だ……)」
真冬の世界が壊れ始めた日、すれ違った車に乗っていた色つきサングラスの男が街灯の下に立っている。
その後ろにはいつものスキンヘッドと刺青が控えていて、へらへらと男のご機嫌取りをしているようだが、真冬の存在には気づいていないらしい。
切れ長の目をした男は真冬から目をそらすことなく、ただじっとこちらを見ていた。
この男の前では隠れても無駄だと、真冬は潔く諦めて、じっと見定めるかのような視線を送ってくるその瞳を何の感情もないまま見つめ返した。