母親から一旦座るように促され、兄と並んでダイニングの席につく。
重たい空気の中、父親が口火を切った。
父親の言うことにはこうだ。
学生時代から仲のいい同級生がいて、昨年一緒に飲みに出かけた父親は、彼から連帯保証人になってほしいと頼まれたそうだ。
酒に酔っていて上機嫌だった父親は、彼のでっち上げた夢の話に感動し、深く考えることすらせず、その場のノリと勢いだけで了承してしまったらしい。
それから時は経ち、その同級生は返済する術も持たないまま闇金に手を出し、そのまま蒸発してしまった。
父親の頭からすっかり抜け落ちた今になって、連帯保証人の存在を知ったヤクザが取り立てにやってきたとのことだ。
この「連帯保証人」というのが不味かった。
せめて保証人であれば抗弁権が使えたというのに、連帯保証人になってしまっている以上、その同級生の借金を肩代わりしなくてはならなくなったのだ。
当然、真冬の家にそんな大金の貯えなどない。
今日はなんとか居留守でやり過ごしたものの、きっとヤクザは明日もやってくるだろう。
明日だけじゃない、明後日もその先も、返済の目処が立つまで、ずっと。