「どうやって」
「ハサミで、切ったの」
「そのハサミはどこにやった」
「……知らない」
真冬がしらを切ると、高見はその手を離してベッドに乗り上げてきた。
無理矢理真冬の体を仰向けにして、そのまま片手で首を掴み、勢いのままにベッドに沈めた。
そして口に銜えた煙草を離し、白い煙を吹きかける。
煙たさに顔を歪めた真冬はそれでも尚温度の変わらない瞳で高見を見上げた。
怒りのせいか理由は分からないが、微かに震えている高見の手は、静かにじんわりと真冬の首を絞めた。
「……ッ」
動揺を隠してきれていない高見によって、白いシャツから覗く真冬の鎖骨に、燃える煙草が押し付けられた。
その熱さに唸り声を上げた真冬を、高見は冷たい瞳で見下ろす。
「答えろ、真冬」
「……ベッドの、した」
高見の剣幕に観念してハサミの在処を朦朧とし始める意識の中で白状すると、パッと手を離される。
大きく息をして酸素を取り込んだ真冬はそのまましばらく咳き込んでいた。
それと同時にじんじんと鎖骨の火傷の痛みが伝わってくる。
高見はベッドから降りるとテーブルの上の灰皿に煙草を押し付けた。
それからベッドの下を覗き込んでハサミを手にした高見は、真冬から離れたところでポケットのスマホを取り出し、電話をかけ始める。
きっと、相手はスキンヘッドか刺青だろう。
真冬の予想は当たっていて、5分程すると大粒の汗をかいたスキンヘッドがドラッグストアの袋を持ってやってきた。
高見と真冬を包む微妙な空気感を察知したのだろう。
スキンヘッドはベッドで俯いたまま座り込む真冬を心配そうに見た後、特に声をかけたりすることはないまま、すぐに帰っていった。