おじさんたちが初めてやってきた日。
その日は当時毎日遊ぶほど仲のよかったマキちゃんと遊ぶ約束をしていて、先に真冬の家に寄ってから、マキちゃんの家に行く予定だった。
「夏野さん!いるんだろ!」
「早く出て来いや!」
家に近づくにつれ、聞いた事のない怒鳴り声が聞こえてくる。
いつも閑静な住宅街に珍しい。
「(なつのさん……?)」
この付近に夏野という苗字は真冬の家だけ。
怯えたような表情を向けるマキちゃんに、真冬はぎこちない笑みを向けた。
「真冬ちゃん家じゃない、よね?」
「……ちがうとおもう」
それは違っていてほしいという、半ば願いのようなものだった。
真冬は汗の滲む手を握りしめ、歩みを進める。
もうすぐそこの角を曲がれば真冬の家だ。
どうか想像した光景とは違っていますように。
そんな真冬の願いはすぐに打ち砕かれた。
真冬の家の前にはスキンヘッドのおじさんと刺青の入った知らないおじさんが立っていて、インターホンを連打しながらひっきりなしに叫んでいた。
「……ま、真冬ちゃん、ごめんね。今日用事あるの、思い出しちゃった」
「……そっか」
「ご、ごめん、わたし帰る」
青ざめたマキちゃんは下手くそな嘘をつくや否や、一目散に反対方向に駆け出した。
真冬はどうしていいか分からず、とにかく目の前の光景から逃げたくて、近所の公園に足を向けた。