1.高見やその仲間に逆らわないこと
2.逃げ出さないこと
3.自らを傷つけないこと
真冬を東京まで連れてきた日、高見は3つのルールを言い渡した。
単純明快なそれは真冬の頭の中をずっとぐるぐると廻っていて、背いたらどうなるのかは察しがついていたから、最初のうちは真冬も大人しく言うことを聞いていた。
高見は毎日のように部屋にやってきては、真冬がご飯を食べているかを確認して帰っていく。
仕事で忙しいときは高見に頼まれたスキンヘッドか刺青が真冬のご飯を持ってきて一緒に食べてくれた。
「俺も高見さんと知り合って長いけど、こんな高見さん初めて見るんだよ」
「へえ」
「嬢ちゃんは高見さんにとって特別なんだろうな。もっと太ったら高見さんも少しは安心するかもしれん、ほらもっと食え」
ある晩、一緒にコンビニ弁当を食べていたスキンヘッドがご機嫌に高見の話を始めた。
この男は高見に憧れ、崇拝している節がある。
スキンヘッドの話に耳を傾けていると、やっぱり何人かは真冬と同じような境遇の女がいて、都内に住まわせているそうだ。
けれど、高見はすぐに他人に処理を任せて、自分は一切面倒を見ないらしい。
ここまで目をかけているのは真冬ぐらいだと。
「(そんなの、特別でもなんでもない。ただわたしが他の人と比べて子どもだからだ)」
真冬の心情なんてつゆ知らず、スキンヘッドの話は高見がイギリス人とのハーフらしいというところで締め括られた。