外に出ると、掴んでいた腕を離される。
低体温の真冬には彼の手はやけに熱く感じた。

家の中でさえ、あんなに寒かったのだ。
薄着の真冬はコートすら着ておらず、ぶるぶると身震いしながら痩せ細った体で寒さに耐えた。

きっと高見に頼めばコートぐらい取りに行くことは許されただろう。

けれど、真冬はどうやって他人に頼るかが分からなかった。
これまで誰かを頼ったり、誰かに甘えたりすることなんて経験していないから。

ぐっと紫色に変わった唇を噛んで、ただ耐えることしか選択肢がなかった。

「乗れ」

何も言わずに震える真冬を、高見はつまらなさそうな顔をして観察するように見つめると、いつもの黒塗りの車の後部座席に乗っておくよう促した。

初めて目が合ったときから、真冬はサングラス越しに見える、鋭い切れ長の目が苦手だった。

けれど、今日から真冬がどう生きていくのかはこの男がすべて決める。

はい、と小さく返事をして、真冬は車の方に歩みを進めた。

真冬にとっては久しぶりに乗る車。
家族旅行に行く時は、真冬はいつもひとりでお留守番だったから。

ドアの開け方が分からなくて手こずっていると、舌打ちをした高見が開けてくれた。