「ケガ、見せて」

 消毒と絆創膏以外の備品を片付けてから、中尾くんと向き合う。

「ん」

 素直に左腕を突き出してきた中尾くんにそっと触れると、消毒をかけて絆創膏を貼る。誰にでも簡単にできるその工程を、中尾くんは真面目な顔付きでじっと見ていた。

「はい、どうぞ」
「ありがと」

 目を伏せてぼそりとお礼を言った中尾くんは、さっきみたいに無防備には笑わなかった。そのことを心のどこかで残念に思ってしまう自分がいて。邪な気持ちを振り切るように頭を振る。
 何考えてるんだろう。中尾くんは、汐里の彼氏なのに。

「どういたしまして」

 私の立場は、中尾くんの彼女の友達。中尾くんに貼った絆創膏のゴミを握りしめる。
 距離を取るために立ち上がろうとすると、何を思ったのか、中尾くんが急に私の手首をつかんで引っ張った。

 前のめりに倒れかけた私を、しゃがんだ体勢の中尾くんが抱き止める。中尾くんが私を引っ張ったのか、私が雪崩れるように押し倒したのか。
 保健室の床で、私は仰向けに倒れた中尾くんの上に覆い重なっていた。

「ご、め……」
「いいよ」

 慌てて退こうとした私を、中尾くんがぎゅっと抱きしめてくる。