チョコケーキの載っていた紙皿はすでに空だったけれど、彼がくれたチーズケーキにはまだ手をつけられずにいた。
「あたしからのチョコは特別だった、ってことなのかな」
自分で口に出して言ってみるものの、「まさか」と否定するもう一人の自分がいることに、真樹は気づいていた。
そんな真樹の隣で、美雪が何やらニヤニヤしている。
「ありゃ、確信犯だね」
「……は? 岡原のこと?」
「違う違う」
美雪は目を丸くした真樹に手を横に振って見せ、ドヤ顔でのたまった。
「アイツじゃなくて、アイツのダチの方。そのチーズケーキ、岡原がチーズ苦手なの分かっててさ、わざとアイツが真樹んとこに持ってくるように仕向けたんだよ」
「ほえー……」
岡原の友人がなぜわざわざそんなことをしたのか、全く見当がつかないほど真樹もバカではない。
(美雪、スゴいな。あたしより作家に向いてるかも。しかも推理小説の)
思いがけず親友の名探偵ぶりを目にした真樹は、彼女の勘の鋭さに改めて脱帽した。
「まあ、それに乗っかる岡原も岡原だけど。――そのケーキ、せっかくだから食べちゃえば?」
「うん、そうする」
せっかくの彼からの厚意だから、ムダにしたくない。――真樹はフワフワのスフレ生地にフォークを入れ、口に運んだ。
「ん~っ、美味しい!」
濃厚なチーズの薫りと優しい甘さが口の中でフワッととろけて、真樹は顔を綻ばせる。
ふと岡原のいる方を見れば、一瞬目が合った彼も笑っているような気がした。
(……マジ? 美雪がさっき言ったこと、当たってんの!?)
彼はすぐに目を逸らしたけれど、その後友達に茶化されて顔を真っ赤にしている彼を目にして、真樹にも事態が呑み込めた。
やっぱり先ほどの彼の言動は、彼が友人の一人である村川に唆されてやったことだったのだ。多分チーズケーキを取りに行ったのも村川で、彼はもちろん岡原がチーズ嫌いなことも承知のうえだったのだろう。
そのうえで、岡原にこう言ったのだ。
『お前が食えねぇんならさ、真樹んとこ持ってけば?』と。
……つまり、だ。
(アイツらにも、あたしの岡原への気持ちはバレバレだったワケだ……。そりゃそうだよね。チョコ渡しに行った時、アイツらもあの場にいたんだもん。全員じゃなかったけど)
少なくとも村川は彼と同じクラスだったので、居合わせていたはず。
そして美雪や友達の話によれば、真樹と岡原の関係は傍から見れば付き合っているように見えていたらしい。岡原の気持ちはともかく、少なくとも真樹が彼に好意を寄せていることくらいはみんな火を見るより明らかだったろう。
「あたしからのチョコは特別だった、ってことなのかな」
自分で口に出して言ってみるものの、「まさか」と否定するもう一人の自分がいることに、真樹は気づいていた。
そんな真樹の隣で、美雪が何やらニヤニヤしている。
「ありゃ、確信犯だね」
「……は? 岡原のこと?」
「違う違う」
美雪は目を丸くした真樹に手を横に振って見せ、ドヤ顔でのたまった。
「アイツじゃなくて、アイツのダチの方。そのチーズケーキ、岡原がチーズ苦手なの分かっててさ、わざとアイツが真樹んとこに持ってくるように仕向けたんだよ」
「ほえー……」
岡原の友人がなぜわざわざそんなことをしたのか、全く見当がつかないほど真樹もバカではない。
(美雪、スゴいな。あたしより作家に向いてるかも。しかも推理小説の)
思いがけず親友の名探偵ぶりを目にした真樹は、彼女の勘の鋭さに改めて脱帽した。
「まあ、それに乗っかる岡原も岡原だけど。――そのケーキ、せっかくだから食べちゃえば?」
「うん、そうする」
せっかくの彼からの厚意だから、ムダにしたくない。――真樹はフワフワのスフレ生地にフォークを入れ、口に運んだ。
「ん~っ、美味しい!」
濃厚なチーズの薫りと優しい甘さが口の中でフワッととろけて、真樹は顔を綻ばせる。
ふと岡原のいる方を見れば、一瞬目が合った彼も笑っているような気がした。
(……マジ? 美雪がさっき言ったこと、当たってんの!?)
彼はすぐに目を逸らしたけれど、その後友達に茶化されて顔を真っ赤にしている彼を目にして、真樹にも事態が呑み込めた。
やっぱり先ほどの彼の言動は、彼が友人の一人である村川に唆されてやったことだったのだ。多分チーズケーキを取りに行ったのも村川で、彼はもちろん岡原がチーズ嫌いなことも承知のうえだったのだろう。
そのうえで、岡原にこう言ったのだ。
『お前が食えねぇんならさ、真樹んとこ持ってけば?』と。
……つまり、だ。
(アイツらにも、あたしの岡原への気持ちはバレバレだったワケだ……。そりゃそうだよね。チョコ渡しに行った時、アイツらもあの場にいたんだもん。全員じゃなかったけど)
少なくとも村川は彼と同じクラスだったので、居合わせていたはず。
そして美雪や友達の話によれば、真樹と岡原の関係は傍から見れば付き合っているように見えていたらしい。岡原の気持ちはともかく、少なくとも真樹が彼に好意を寄せていることくらいはみんな火を見るより明らかだったろう。