真樹はとりあえず、美雪に訊ねてみたけれど。答えてくれるのは友達のうち誰でもよかった。
 電話で話しただけなので、今の彼について知っているのは彼の声だけなのだ。

「あー、そっか。真樹は隣の区に住んでるから、見かける機会もなかったんだよね」

 またまた別の友達の言葉に、真樹は頷く。

「う~ん、どんな……って。ああでも、会ったら変わりようにビックリすると思うよ。たとえていうならEXILE(エグザイル)系?」

「EXILE……」

 なんとなく想像はつく。つまり、〝ガテン系〟ということだろう。筋肉ムキムキの細マッチョ。

「背もだいぶ伸びたよね。中学ん時、百七十なかったじゃん? 今は多分、百八十近くあるんじゃないかな」

「えっ、そうなの?」

 中学時代、二人の身長差は二十センチもなかった。真樹も当時は百五十センチだった。
 五年経って、今は百五十センチ台半ばだけれど、女子と男子とでは成長の度合が違うのだろうか。

「――あっ、ウワサをすれば。来たよ」

 美雪が真樹の肩をポンポン叩いた。中庭の奥にある正門の方向を指さす。
 今まさに、その方向から四~五人の男子グループが喋りながらやってくるところで、その面々の顔には真樹にも見覚えがあった。

(間違いない。岡原の友達だ)

 みんな身長が伸びたり、体格が変わったりしているものの、顔には中学生の頃の(おも)(かげ)が残っている。

「あ、真樹だ」

 ほんの数週間前に電話で聞いたあの声でそう言い、その〝EXILE系〟が真樹に近づいてくる。

「……岡原? マジで!? 信じらんない」

 真樹の記憶にある彼の姿とは、まるで別人だった。顔には少しの面影があるものの、前もって美雪から話を聞かなければ分からなかっただろう。

「お前なぁ、そんなにビックリすることねえじゃん。『信じらんない』って何だよ」

 そう言って呆れる彼は、間違いなく真樹が今も好きな岡原だ。

「あ……、ゴメン。――背、伸びたね。それに(たくま)しくなった」