五年ぶりに聞いた彼の声は、真樹が記憶していた中学時代の彼の声よりぐっと落ち着いている。

『……おーい、聞こえてるかー?』

「バカ、聞こえてるよ。久しぶり」

 彼にからかわれ、それに真樹が言い返す。このやり取りも五年前と変わっていない。

『元気そうじゃん。よかった。――あ、そういやさ、お前んとこにも同窓会の案内状って来た?』

「えっ? うん、来たけど」

 彼はこのハガキが届いたから、真樹に連絡することにしたのだろう。

『そっか、それなら話は()えぇわ。同窓会、お前も出るだろ?』

「いや、まだ分かんないよ。出たいのはヤマヤマだけど、休みが取れるかどうか……」

『休み? お前、作家やってんじゃねえのかよ?』

 作家は自由業じゃないのか、と言っているように、真樹には聞こえた。

 ――というか。

(岡原も知ってたのか。あたしがラノベ作家になったこと)

 彼女はむしろ、そのことに驚いていた。
 まあ、ペンネームは本名とあまり変わらないし、知り合いだったら気づかない方がどうかしていると思うけれど。

「いや、そうなんだけどさ。あたし、本屋でバイトもしてるから。あたしが心配してるのはそっちの休みの方だよ」

 祝日は客商売にとって書き入れ時だから、休みが取れるかどうか分からない。そう真樹が説明すると、岡原に「〝書き入れ時〟ってナニ?」と()かれた。

(えっ、そこから説明しなきゃいけないの? カンベンしてよ……)

 真樹がため息をつくと、岡原は「ゴメン、俺が悪かった!」と謝った。

『まあ、休みが取りにくいってことだけは分かったよ。けど、何とかなんねえの? 俺はお前にも出てほしいんだけどな』

「……なんで、そんなにあたしに出てほしいのよ?」