講義ごとに出席の取り方は異なる。環境科学の講義では、出席カードという、学籍番号と名前を書いて提出する紙を使う。講義の最初に配られ、講義の最後に提出するものだ。
一般的な大学の講義において、出席数は単位に大きく影響する。けれど、講義に出るのは面倒くさい。
そんな学生は、知恵を絞って講義に出ずに出席を勝ち取ろうとする。その知恵と労力を勉強に回せばいいのに、などと中途半端に真面目な私は思ってしまうのだが、どうも学生というものは遊びたがる人が大半らしい。
代返というのが代表的な方法だが、出席カードでも、最初にもらったものを提出せずにコピーする、という手法が存在する。
教授の方も、ただではやられるものかと言わんばかりに、週ごとに出席カードの色を変えてきたり、座る席を指定したり、はたまた、そういったことが面倒になったのか、出欠を取らずにレポートとテストだけで成績をつけたりする。
配られた出席カードに名前を記入しながら、横目で隣の席を見る。
静電気の彼も、私と同じように、カードに名前を記入しているところだった。
彼は記入が終わったカードを、机の左の方に置く。
本人にばれないように、眼球だけを動かしてその出席カードを見る。
陣内夜空。
男性にしては少し控えめな文字が、綺麗にバランスよく並んでいた。
じんない、よぞらさん。
とても素敵な名前だと思った。常識から逸脱していなければ、どんな名前でもそう思っただろうけど。
学籍番号を見ると、二年生だということがわかった。
陣内夜空先輩は、背筋を伸ばして教授の話を聞いていた。
二回目の講義が終わり、陣内先輩が教室を出て行く。
今回も特に会話はなかった。でも、きっと来週も同じ席に座ってくるはずだ。講義はまだ、十回以上ある。