いつもは隣に座っていた先輩が、真正面にいる。
しかも、眼鏡をかけている。似合いそうだという私の勘は当たっていたらしく、黒縁のパソコン用らしきメガネは、陣内先輩を五倍くらい魅力的にしていた。
真剣な顔でディスプレイと向き合っている先輩を、ずっと見ていたかった。
二人で課題を進める。一時間くらいが経過して昼休みが終わり、お腹が空いてきたころ。
「ふぅ。だいぶいい感じに進んだかな」
陣内先輩がパソコンを閉じた。
「片山さんはどんな感じ?」
「私もかなり進みました。あと最後の方だけ書いて、見直せば終わりそうです」
「それはよかった。でも早いね。僕はまだ半分くらいしか書けてないよ」
「参考資料、ちゃんと読まれてましたもんね。きっと、高い評価がもらえるんじゃないですか? それに、半分書ければもうすぐですよ」
私たちは小声で会話をした。内緒話みたいで、なんだかドキドキする。
「そうだといいんだけどね。というか片山さん、今さらだけど、誘っちゃって迷惑じゃなかった?」
「いつもこういう課題はギリギリになっちゃうんで、本当に助かりました。ありがとうございました」
「いや、こちらこそ。一人だとついだらけちゃうから、今日みたいに監視してくれる人がいるとすごくありがたいんだよね」
先輩が微笑みを私に向けてきた。充足感で満たされる。
いや、落ち着け。一緒に課題をしただけだ。
「監視って。面白い表現ですね。あ、あの――」
私が勇気を出して、よければ、これから一緒にご飯でもどうですか? と、言おうとしたそのときだった。
「夜空くん、おまたせ」
綺麗な女性が、陣内先輩の隣に現れた。