きっとすぐよくなる。大丈夫。大丈夫だからね。
 私がマッサージをしている間ずっと、心護は何度も温かい言葉で励ましてくれた。
「ねぇ、鈴凰ちゃんのお腹さん」
 唐突に話しかける対象が私から私のお腹に変わり、ビックリして思わずお腹から心護に視線を移した。一方、心護は私のお腹をひどく真剣な顔で見据えていた。
「鈴凰ちゃんを苦しめないで。鈴凰ちゃんにこれ以上(つら)い思いをさせないでね。どうかお願いします」
 心護は両手を祈るように組みながらそう言い、さらに「痛いの痛いの飛んでけ!」とよく聞くフレーズを口にした。
「……今の。何?」
「おまじないだよ♪」
「おまじない?」
「うん! 俺が小三の頃にね、お母さんが今みたいにおまじないを唱えてくれたんだ。そしたら不思議と痛みが和らいで心がじわぁーとあったかくなった」
 小三の頃におまじないを唱えてくれたお母さんというのは、白樺心護の母親ではなく私の母親だ。黙り込んだ私に心護が「ごめん」と謝罪した。
「こんなの気休めにしかならないよね」
「ううん。そうじゃなくて心護は私の体調を心配してくれるんだね……??」
 語尾が不自然に上がる。瞼が熱くなってきた。やばい泣きそう。
「そんなの当たり前だよ」
「当たり前じゃない! ……心護はおかしいよ」
 ついに我慢できずに涙がボロボロと零れ落ちて頬を伝う。
「お、おかしい……?」
 心護が困惑している。
「だって! こんな風に私に優しく接してくれる人なんて一人もいなかったッ!!」