でも。何でだろう。苦しい。自分で自分の首を絞めた時も今と同じぐらい息苦しかった。
 倒れそうになりながらも教室の床を踏み締めて、廊下側の一番後ろの席に何とか辿り着いた。こんなことになるなら後ろのドアから入ればよかった。
 柴田くんが廊下にいるのを発見した時に、『よし。死ぬ前にせめて柴田くんにおはようって挨拶しよう』と決めて、後ろのドア前を通り過ぎたのがまずかった。完全に選択をミスった。まあでも、後ろから入ることを選択したとしても、入る直前に柴田くんのあの言葉は聞き取れたはずだからどのみち傷ついたんだ。

 学校に来んな──!

 柴田くんがぼそりと呟いた『うわっ! 来たし……』が私にはそう言っているようにしか聞こえなかった。
 ああ死にたい、とリュックサックを机の上に下ろしながら願う。学生鞄を机の横にかけながら内心呟く。屋上から飛び降りたい。
 けど、私は高所恐怖症だから、実際に屋上に上がったら屋上から下を見下ろしただけでガクガクと足が竦んで一メートルくらい後ずさった後にそのまま座り込んで動けなくなるだろう。こんなに死にたいのに死ぬことすらできないなんて情けない。
 もし柴田くんがIBSになったら、私にぶつけた数々の言葉を思い出して反省するのだろうか。でも柴田くんはIBSになって欲しくない。この病気になればどんなにポジティブな人でもネガティヴになると思う。それくらいIBSはクソみたいな病気なのだ。底抜けに明るい貴方が暗くなってしまうのだけは嫌だ。
 だから。柴田くんがIBSになりませんように。私は報われなかったけどどうか貴方は報われますように。
 IBSが早く治りますように、という私の願いを未だに叶えてくれない神が叶えてくれるかはかなり怪しいけど。こんなことを願うくらい私は柴田くんのことが好きだったんだよ──なんて我ながら吐き気がするほど気持ち悪い。

 『吐き気がするほどくせーんだよッ!!』