言うなっちゅーの、と私はため息混じりに呟いて、指で涙を拭って鼻を啜った。
 “妄想”の中でも泣いて現実でも泣いている。夢の中でも夢から醒めても泣いているのと似たようなものだ。
 こうなったらいいのにな、と思う。長い長い妄想だった。そう。もう一人の私が断言した通り、白樺心護は現実世界には存在しない。徳永鈴凰の妄想の中だけに存在する一キャラクターに過ぎない。
 実際に起こった訳ではないから妄想タイムが終了した後は悲しいし虚しくなるけど、妄想で救われることもあるし妄想している間は現実逃避できるから妄想することだけはどうしてもやめられない。
 妄想とは言っても、私が心護に話した内容は全て真実で嘘は吐いていない。妄想の中でさえ、病気の症状や本音を話すのは躊躇してしまったけど。
 心護が私に言った台詞は全て、私が求めている言葉だろう。それに、心のどこかで期待しているのかもしれない。いつか、自分の家族や友人、これから出会うかもしれないこの世にいる誰かが自分に心護のように優しく接してくれることを。……あるわけないのに。人に期待すんな。くだらない。