「そうかなぁ、だってあいつ女子のことは彼女以外、下の名前で呼ぶことはないからさ」


 そう……なの?

 そこらへんのことは、よくわからないけれど……。

 よくわからないけれど、そういうこともあるんじゃないかな。

 彼女以外の女子のことを下の名前で呼ぶことも。

 だから。


「そうかな……」


 私は耀子にそう言った。

 だけど。


「そうだよ。だから遥稀のことは下の名前で呼んだということは……」


 耀子はまだそんなことを言ってきた。

 だから。


「ない‼」


 ものすごく強調して『ない』を言った。


「え……?」


 私が言った『ない』があまりにも迫力があったのか。

 少しだけ驚いた様子の耀子。

 それでも。


「そんなの、ないないないないない‼」


 私は思いっきり『ない』の言葉を連発した。


「ちょっと遥稀、なにもそこまで『ない』を連発しなくても……」


 少しだけ戸惑いながらそう言った、耀子。

 耀子は戸惑っているけれど……。

 そもそも私が『ない』をものすごく強調して連発して言ったのは、耀子が変なことを言ってきたから……。

 ……あいつが……松尾が……私のことを……好……き……だとか……。

 そんな……そんなこと……。

 ……そんなこと……そんなこと……あるわけがない。

 ……あいつが……松尾が……私のことを……好……き……だなんて……。

 そんな……そんなわけ……。


 ……あ……。
 なんか、そんなことが頭の中を駆け回っていたら……。