"内浜っ!"
はつらつとした、窓越しに感じる夏の日差しのような君の高い声。
君にそう呼ばれて、引っ張られるかのように野球を始めた10歳の頃の自分を想うよ。その頃の自分に誇れるような人になりたい。
君は放課後教室で、よくピアノを奏でていた。手元は不器用だったけれども、その横顔がめちゃくちゃ楽しそうに見えたんだ。俺が落ち込んでいたとき、ピアノの指使いを教えて励ましてくれたのも君だった。
俺は君に憧れた。何かに夢中になりたくて町内野球クラブに入った。直政やたくさんの野球仲間に出会えた。強豪チームの中学高校大学に進んでたくさん才能ある奴を見てきた。
でも、いつか不器用でも掴むものがあると、ただただ信じてきた。君の不器用な旋律を、何度も何度も、描いて───。