「みお……」


大人になった君が笑っている。綺麗なドレスを着てステージに立ち、
別の楽器を手に構えて、また音楽を奏でていた。


「嘘だろ」


グラスを持つ手元を緩めてしまい、余っていたカクテルを大胆にも床に溢してしまった。
君を恍惚と紹介したミチさんも流石に驚いていた。すぐさま直政(なおまさ)の叔父さんのマスターが気づいて清掃に入った。

そして派手な音がしたため君もこちらを振り向き、
何の心の準備も出来ていないまま、
カウンターの椅子に腰掛ける俺と、綺麗に着飾った君が、
10年以上ぶりに向かい合ってしまった。