「ごめん……インフルエンザになっちゃってさ」

「インフルエンザ!? 大丈夫なの!? 何か必要なものとかある?」

「とりあえず、大丈夫……ゴホ、ゴホッ……」

「律……」

 擦り切れるような痛々しい咳が部屋から聞こえる。


「律、開けてよ」

「……ダメだ」

「どうして? ……律に、会いたいよ」

「……染うつったら大変だろ? それでなくても朝会ってるんだ。美耶にも染しているかもしれない」

「そんなの平気だよ。律からなら、染ったって構わないよ」

「……美耶、ワガママ言わないでくれよ」

「……」

 私は扉の前へ座り込んだ。


「……美耶、もう遅いから帰りな。明日の朝起きられないぞ」

 私は一人、大きく頭を振った。

「……私は何も出来なくて、朝も律に起こしてもらってばっかりで、いつも迷惑ばっかりかけて……本当は私が律を守っていきたいのに……」

「……」

 ロングカーデのフードを深く被ると、ぎゅっと膝を抱えた。