深く、深く沈んだ夢の中。
そこからいつも私を目覚めさせてくれるのは、律の「おはよう」のメールだった。
何をされても起きることが出来ない、朝が苦手な私が、律からのメールにはすぐ気付くことができた。
その「おはよう」のメールを確認すると、サイドボードに置かれたリモコンでテレビを付ける。これも毎朝のこと。
聞こえてくる番組の明るい声、日々のニュースを読み上げる真剣な声に時々耳を傾け、急いで身支度を整えて、家を出る。いつもの待ち合わせの時間に間に合うように家を出られるのも、律からのメールのおかげだった。
「律ー! おはよう!」
家から5分、その道で待つ律に大きく声をかけた。
「あーあ、美耶が大声だすから逃げちゃったよ」
道にしゃがみ込んでいる律の周りには、数匹の猫が集まっていた。ゴロゴロと大きな音を出して律に甘える大きな体の茶白の猫。ここら辺の番長猫だ。周りを見ると、私の声に驚いて隠れてしまった猫たちが、ゆっくりと私の足元に寄って来た。
「あー、ごめんねぇ。びっくりしちゃったよねー」
私はそう言いながらしゃがみ込むと、猫たちに「おはよう」と手を伸ばす。野良猫なのに柔らかい毛並みと、丸々太ったお腹から、この住宅街の人たちから可愛がられている様子が伺えて、嬉しくなった。