あの言葉通り、次の週からまた忙しくなった律は、会うことも話すことも少しずつ減っていった。

 それでも、毎朝の決まった時間の「おはよう」は忘れない。同じ時間に家を出て、猫たちと話をして駅へ向かう。同じ時間の電車に乗って、そして手を振って別れる。

 忙しくて会えない日が続いても、その毎朝があれば幸せだった、頑張れた。


「律、大丈夫?」

「え?」

「なんだか顔が白いよ? 具合悪いんじゃない?」

「そうかな? ちょっと寝不足なだけだよ」

「……」


 いつもの電車、いつもの朝の会話が、『いつも』と違うことに気付いていた。