あれから、数週間が経ったころ、俺はいつも通りのつまらない毎日を送っていた。そんなある日、俺が忘れ物を取りに放課後の教室に戻ると、一人見慣れた姿がそこにあった。この学校の制服を着て、俺の机で体操着のにおいをかいでいる女子は……かつてつきまとわれた女神の本体である生身の女神燈子だった。
「なにをしてる? 俺の席で俺の体操着に……」
「あれ? ここはラクの席だったの? そっかー席替えしてたんだね。ラクの体操着の匂いをかいでいたって思った?」
女神は面白そうに笑いだす。
「これ、私の体操着だから。柔軟剤の香りがいい匂いだからちょっと嗅いだだけだよ。ラクの体操着のにおいを嗅ぐわけないでしょ? いやらしいな」
俺は、赤面する。たしかに、よく考えれば自分の体操着は別な場所にしまってある。でも、女子が自分の席で匂いを嗅いでいる姿を見るとつい勘違いしてしまう心理をうまく利用して、さっそくからかってきたのか。
「相変わらず、からかうのがうまいな。おかえり」
俺は、はじめて女神の実体に挨拶をする。
「自分の机のところで何かしていると、つい自分の体操着だと思っちゃうのって心理学的に普通だから。今日は私の勝ちだね」
この女は確信犯だ。やはり俺をからかうためにやってきたらしい。
「ただいま。明日から通常登校できるようになったの。先生に挨拶に来たついでに、ラクをからかいに来ただけだよ」
そう言うと、さらに俺のそばにつめ寄って女神は話し始める。俺たちの距離は近い。
「そうだ、この青い猫耳カチューシャ、神様のきまぐれで、もらっちゃった。まだ便利アイテム出す能力はあるから、使わせてあげてもいいよ。でも、私と勝負して勝ったらね」
得意げに女神はカチューシャをつけて、招き猫のような萌えた格好をする。悔しいが、やっぱり似合っている。萌え圧とでもいおうか、胸がざわつく。猫耳パワー恐るべし。
「この猫耳は他のみんなにはみえないから、つけたままにしておこうかな。無くしたらこまるし」
「猫耳状態で生活するのかよ?」
猫耳パワーが常に俺を襲うとはありえない! しかも俺にしか青い猫耳が見えないのかよ!
「神様からの贈り物だから、常に身につけておかないと」
わかったから、もう上目遣いの萌え招き猫ポーズはやめろ! 精神がおかしくなってしまう。
「人間としてじゃなく、恋愛として私を好きになってもらわないとね。ラクって入学したころに読んでたライトノベルのラブコメ率高いよね。2番目に現代ファンタジーものが多い印象。意外とラブコメの世界に憧れがありそうだよね」
「なんで俺の読書傾向知っているんだよ? 俺はおまえと話したこともないし、入学当初、存在すらも把握していなかったのに」
「どうしてでしょう? 便利アイテムを使って聞いてみる?」
猫耳をひょいっと動かしながら女神は問いかける。猫耳威力は半端ない。一瞬、萌えの圧で吹き飛ばされそうになった。萌え死にしたら、責任とれよ!
「じゃあ一緒に帰ろう」
女神が鞄を持って振り返る。ちょうど窓から夕陽が差し込んで女神を照らし出す。なぜか神々しい。
「俺と勝負して勝ったら帰ってあげようか」
女神とならばコミュニケーションが取れるようになってるんじゃないか。他の人とは相変わらず話すらもできていないけど。
「そこまでして、一緒に帰りたくないし、別にいいや」
そっけなく帰ろうとする女神。
「おい、女神、勝手に帰るな。俺としては、お前の便利アイテムがほしいところだ。勝負して俺が勝ったら使わせろ」
「そこまでして一緒に帰りたいのか。仕方ないな」
振り向きざまの猫耳女神も圧巻だ。
俺と女神は夕日に照らされた廊下を歩き出す。そんな放課後も悪くない。
「ラクのおしりの穴、気になるなあ」
おしりの穴っておしり限定の穴だよな。壁の穴というオチじゃないよな。俺は自分の尻を思わず隠す。肛門狙いなのか? やめてくれ。女神の細い指先が俺の尻に近づく。
少し苦笑いの女神。
「べつに肛門になにかしようなんて思ってないから。制服のズボンのおしりのところにほつれた跡があって、小さな穴になってるよ。遠目だと目立たないけど。直してあげようか?」
「まじか? 気づかなかった! 自分で直すから、もうまじまじと尻を見るのはやめてくれ」
やはり尻を隠す俺。
「相変わらず、かわいいなぁ。」
くすっとわらう女神は実態があって、普通の人間だ。宙に浮くこともできない。
俺と女神の攻防戦は続く。女神は暗木ラクをからかいの末に恋に落としてみたい。暗木ラクは恋には落ちたくない、便利アイテムを使いたい。そんなふたりのラブコメ頭脳戦が日常の中で、またはじまる。
暗木ラクになるのか、暗木ラクになるのか……女神次第になるのかもしれない。
(アン=暗、ラッ=ラク、キー=木)(暗いを取ると、ラッ=ラク、キー=木)
「なにをしてる? 俺の席で俺の体操着に……」
「あれ? ここはラクの席だったの? そっかー席替えしてたんだね。ラクの体操着の匂いをかいでいたって思った?」
女神は面白そうに笑いだす。
「これ、私の体操着だから。柔軟剤の香りがいい匂いだからちょっと嗅いだだけだよ。ラクの体操着のにおいを嗅ぐわけないでしょ? いやらしいな」
俺は、赤面する。たしかに、よく考えれば自分の体操着は別な場所にしまってある。でも、女子が自分の席で匂いを嗅いでいる姿を見るとつい勘違いしてしまう心理をうまく利用して、さっそくからかってきたのか。
「相変わらず、からかうのがうまいな。おかえり」
俺は、はじめて女神の実体に挨拶をする。
「自分の机のところで何かしていると、つい自分の体操着だと思っちゃうのって心理学的に普通だから。今日は私の勝ちだね」
この女は確信犯だ。やはり俺をからかうためにやってきたらしい。
「ただいま。明日から通常登校できるようになったの。先生に挨拶に来たついでに、ラクをからかいに来ただけだよ」
そう言うと、さらに俺のそばにつめ寄って女神は話し始める。俺たちの距離は近い。
「そうだ、この青い猫耳カチューシャ、神様のきまぐれで、もらっちゃった。まだ便利アイテム出す能力はあるから、使わせてあげてもいいよ。でも、私と勝負して勝ったらね」
得意げに女神はカチューシャをつけて、招き猫のような萌えた格好をする。悔しいが、やっぱり似合っている。萌え圧とでもいおうか、胸がざわつく。猫耳パワー恐るべし。
「この猫耳は他のみんなにはみえないから、つけたままにしておこうかな。無くしたらこまるし」
「猫耳状態で生活するのかよ?」
猫耳パワーが常に俺を襲うとはありえない! しかも俺にしか青い猫耳が見えないのかよ!
「神様からの贈り物だから、常に身につけておかないと」
わかったから、もう上目遣いの萌え招き猫ポーズはやめろ! 精神がおかしくなってしまう。
「人間としてじゃなく、恋愛として私を好きになってもらわないとね。ラクって入学したころに読んでたライトノベルのラブコメ率高いよね。2番目に現代ファンタジーものが多い印象。意外とラブコメの世界に憧れがありそうだよね」
「なんで俺の読書傾向知っているんだよ? 俺はおまえと話したこともないし、入学当初、存在すらも把握していなかったのに」
「どうしてでしょう? 便利アイテムを使って聞いてみる?」
猫耳をひょいっと動かしながら女神は問いかける。猫耳威力は半端ない。一瞬、萌えの圧で吹き飛ばされそうになった。萌え死にしたら、責任とれよ!
「じゃあ一緒に帰ろう」
女神が鞄を持って振り返る。ちょうど窓から夕陽が差し込んで女神を照らし出す。なぜか神々しい。
「俺と勝負して勝ったら帰ってあげようか」
女神とならばコミュニケーションが取れるようになってるんじゃないか。他の人とは相変わらず話すらもできていないけど。
「そこまでして、一緒に帰りたくないし、別にいいや」
そっけなく帰ろうとする女神。
「おい、女神、勝手に帰るな。俺としては、お前の便利アイテムがほしいところだ。勝負して俺が勝ったら使わせろ」
「そこまでして一緒に帰りたいのか。仕方ないな」
振り向きざまの猫耳女神も圧巻だ。
俺と女神は夕日に照らされた廊下を歩き出す。そんな放課後も悪くない。
「ラクのおしりの穴、気になるなあ」
おしりの穴っておしり限定の穴だよな。壁の穴というオチじゃないよな。俺は自分の尻を思わず隠す。肛門狙いなのか? やめてくれ。女神の細い指先が俺の尻に近づく。
少し苦笑いの女神。
「べつに肛門になにかしようなんて思ってないから。制服のズボンのおしりのところにほつれた跡があって、小さな穴になってるよ。遠目だと目立たないけど。直してあげようか?」
「まじか? 気づかなかった! 自分で直すから、もうまじまじと尻を見るのはやめてくれ」
やはり尻を隠す俺。
「相変わらず、かわいいなぁ。」
くすっとわらう女神は実態があって、普通の人間だ。宙に浮くこともできない。
俺と女神の攻防戦は続く。女神は暗木ラクをからかいの末に恋に落としてみたい。暗木ラクは恋には落ちたくない、便利アイテムを使いたい。そんなふたりのラブコメ頭脳戦が日常の中で、またはじまる。
暗木ラクになるのか、暗木ラクになるのか……女神次第になるのかもしれない。
(アン=暗、ラッ=ラク、キー=木)(暗いを取ると、ラッ=ラク、キー=木)