毎日の日課、宿題をして、予習をする。俺の努力は人一倍だと思っている。学年一位をキープするのは努力の結晶だ。
ちょっと難しい問題があると、女神が家庭教師のごとく指導を始める。秀才か? もしかして実は年上で既に授業で習っていたのだろうか?
「宿題をあっという間に終わらせる便利アイテムとかないの?」
俺は、便利アイテムを持っているという女神に催促する。
「あるけど、たこやきを出しちゃったからね。今日はだめだけど」
「明日、お願いしようかな。宿題面倒だし」
「そんなことをしていると、テストの成績落ちちゃうよ。《《今は1番なんでしょ》》。塾なしで独学でよく勉強できてると思うよ」
女神がほめると何か裏がありそうで怖い。ってなんで俺が1番だという情報を知っているんだ? 怖いな。正真正銘のストーカーかもしれない。
「今、明日お願いしようかなって言ったでしょ。明日が必ず来るって思えるのって幸せなことなんだよ。明日生きているかどうかわからない、なんていう人もこの世の中にいるわけだし」
たしかに、明日生きているかどうか、そんなことは誰にもわからない。事故に巻き込まれることだってある。でも、健康な若い人ならば、明日があって当然だと思うのだ。やっぱり、女神は病を患っているとかそういった類の人間なんだろうか。そんなことはあるはずない。元気いっぱいで底なしの明るさ全開なのだから。
俺は宿題を終え、予習が終わると自然とあくびが出た。もう寝る時間だ。結構今日も遅くまで勉強したし、疲れた一日だったな。そもそも女神という災難が天から降ってきたから疲れが10倍なんだよ。なんて思いながら布団に入ろうとした。――って俺の布団に女神がいるじゃないか。めちゃくちゃ、くつろいでいるではないか。
「おまえもここで寝る気か? おまえも眠るのか?」
「私だって眠くなるし、眠るならば柔らかい布団の上の方がいいよ」
「落ち着いて寝れないから、おまえは野宿でもしていろ」
「かわいい女子に向かってひどくない?」
「んじゃ、そのあたりの床の上で寝ていろ」
「いやいや、ひどいよ。床って冷たいし冷えるし」
「その体なら、冷えそうにないけどな。触れることもできない気体みたいなものだろ?」
「この体、気体なんだ。ためしに、ラクの服の間をすり抜けてみるよ」
「え? ……そんなことしなくていいって」
と断った瞬間に、女神は風のように俺のTシャツの間をくぐり抜ける。風が俺の上半身を駆け抜けた感じだ。普通はない角度からの風が吹いたみたいな感じだ。肌に触れるのは空気だとしても女神なわけだから、恥ずかしくなる。
「じゃあ短パンの間も通り抜けてみようか」
「いや、それは勘弁だ。断る」
「ちぇー、つまんないの」
なんていやらしい女神だ。俺は布団をかぶって眠ることにした。
「電気消すから、おまえはその辺で寝ていろ。寒かったらこれ使え」
俺は毛布を一枚女神に渡す。気体でできているならば、風邪をひくこともないのかもしれないが、一応人としての優しさだ。
「ラク、おやすみ。この行為でラクの優しさに負けちゃった」
意外と素直だな。俺は少々警戒する。
そのあと、どうにも同じ部屋に女神がいると思うと眠れない時間が過ぎた。
「ねえ、ラク、起きてる?」
「ああ、起きてるけど」
「興奮して眠れないの?」
「別に興奮してないし」
「ラクの明日使いたい、便利アイテムは宿題片づけるペンだっけ?」
「それもいいけど、俺、明日誕生日なんだ、って12時過ぎたら今日か」
「え? そうなの? ハッピーバースディーラク!!」
「そんなこと言われたの生まれて初めてかも」
「何それ、大げさだよ」
「俺の家、父親しかいないから。収入は安定していてお金に困っていないけれど、仕事が忙しいから誕生日とかクリスマスとかそういった行事はやらないんだ」
「プレゼントは?」
「現金をもらって好きな物買えって。だから本ばかり増えてる」
「好きな物が買えるならいいじゃん」
「でも、一生懸命選んでくれたものをもらったことってないから、人間が苦手になったのはそういった幼児期の形成が原因なのかもな」
「ラクも色々大変なんだね。じゃあ明日お祝いしてあげるよ。どうせ友達もいないんだし私に任せなさい」
そんな話をしているうちにいつのまにか女神は眠っていたようだった。電気を消して部屋は暗いので、見えないが、寝息が聞こえる。よく考えると空気と同じ物質でできているのだから、意識する必要もないな。
しばらくすると、女神がなにやら声を発する。でも、俺に話しかけているわけではなさそうだ。しかし、その声がいやらしい。
「あん…あっ…いく…」
行くってどこに!? しかも謎のあえぎ声。部屋が暑くて寝苦しいのかもしれない。しかしながら、エアコンのリモコンは離れた場所にあり、女神の横を通りすぎる必要がある。もし、万が一だが、俺が寝ていると思い、何かしらの神聖なる行為をしていたら、やはり失礼ではないだろうか。見て見ぬふりが一番だ。俺はしばらく声を聞いていたが、そのまま女神は寝入ってしまったらしく静かになった。しばらく、妄想に支配され、俺の脳内は熱くなっていたが、疲れと眠気が勝利した時、眠りに落ちたようだ。
朝になるといつも通り明るい女神がおはようと話しかけてくる。
「昨日暑かったか?」
あの声のことが気になり、確認してみる。
「昨日は怖い夢を見ていて苦しかった記憶しかないわ。あの世に連れていかれる夢。あの世に行く? と聞かれたから、行くのは嫌と言ったの」
「あの世が嫌ということは、お前はやっぱり幽霊じゃなく生きているのか?」
「そうだよ」
昨日の夜は夢でうなされていたらしい。そして、死にたくないということは生きている何者かだということは確認ができた。
ちょっと難しい問題があると、女神が家庭教師のごとく指導を始める。秀才か? もしかして実は年上で既に授業で習っていたのだろうか?
「宿題をあっという間に終わらせる便利アイテムとかないの?」
俺は、便利アイテムを持っているという女神に催促する。
「あるけど、たこやきを出しちゃったからね。今日はだめだけど」
「明日、お願いしようかな。宿題面倒だし」
「そんなことをしていると、テストの成績落ちちゃうよ。《《今は1番なんでしょ》》。塾なしで独学でよく勉強できてると思うよ」
女神がほめると何か裏がありそうで怖い。ってなんで俺が1番だという情報を知っているんだ? 怖いな。正真正銘のストーカーかもしれない。
「今、明日お願いしようかなって言ったでしょ。明日が必ず来るって思えるのって幸せなことなんだよ。明日生きているかどうかわからない、なんていう人もこの世の中にいるわけだし」
たしかに、明日生きているかどうか、そんなことは誰にもわからない。事故に巻き込まれることだってある。でも、健康な若い人ならば、明日があって当然だと思うのだ。やっぱり、女神は病を患っているとかそういった類の人間なんだろうか。そんなことはあるはずない。元気いっぱいで底なしの明るさ全開なのだから。
俺は宿題を終え、予習が終わると自然とあくびが出た。もう寝る時間だ。結構今日も遅くまで勉強したし、疲れた一日だったな。そもそも女神という災難が天から降ってきたから疲れが10倍なんだよ。なんて思いながら布団に入ろうとした。――って俺の布団に女神がいるじゃないか。めちゃくちゃ、くつろいでいるではないか。
「おまえもここで寝る気か? おまえも眠るのか?」
「私だって眠くなるし、眠るならば柔らかい布団の上の方がいいよ」
「落ち着いて寝れないから、おまえは野宿でもしていろ」
「かわいい女子に向かってひどくない?」
「んじゃ、そのあたりの床の上で寝ていろ」
「いやいや、ひどいよ。床って冷たいし冷えるし」
「その体なら、冷えそうにないけどな。触れることもできない気体みたいなものだろ?」
「この体、気体なんだ。ためしに、ラクの服の間をすり抜けてみるよ」
「え? ……そんなことしなくていいって」
と断った瞬間に、女神は風のように俺のTシャツの間をくぐり抜ける。風が俺の上半身を駆け抜けた感じだ。普通はない角度からの風が吹いたみたいな感じだ。肌に触れるのは空気だとしても女神なわけだから、恥ずかしくなる。
「じゃあ短パンの間も通り抜けてみようか」
「いや、それは勘弁だ。断る」
「ちぇー、つまんないの」
なんていやらしい女神だ。俺は布団をかぶって眠ることにした。
「電気消すから、おまえはその辺で寝ていろ。寒かったらこれ使え」
俺は毛布を一枚女神に渡す。気体でできているならば、風邪をひくこともないのかもしれないが、一応人としての優しさだ。
「ラク、おやすみ。この行為でラクの優しさに負けちゃった」
意外と素直だな。俺は少々警戒する。
そのあと、どうにも同じ部屋に女神がいると思うと眠れない時間が過ぎた。
「ねえ、ラク、起きてる?」
「ああ、起きてるけど」
「興奮して眠れないの?」
「別に興奮してないし」
「ラクの明日使いたい、便利アイテムは宿題片づけるペンだっけ?」
「それもいいけど、俺、明日誕生日なんだ、って12時過ぎたら今日か」
「え? そうなの? ハッピーバースディーラク!!」
「そんなこと言われたの生まれて初めてかも」
「何それ、大げさだよ」
「俺の家、父親しかいないから。収入は安定していてお金に困っていないけれど、仕事が忙しいから誕生日とかクリスマスとかそういった行事はやらないんだ」
「プレゼントは?」
「現金をもらって好きな物買えって。だから本ばかり増えてる」
「好きな物が買えるならいいじゃん」
「でも、一生懸命選んでくれたものをもらったことってないから、人間が苦手になったのはそういった幼児期の形成が原因なのかもな」
「ラクも色々大変なんだね。じゃあ明日お祝いしてあげるよ。どうせ友達もいないんだし私に任せなさい」
そんな話をしているうちにいつのまにか女神は眠っていたようだった。電気を消して部屋は暗いので、見えないが、寝息が聞こえる。よく考えると空気と同じ物質でできているのだから、意識する必要もないな。
しばらくすると、女神がなにやら声を発する。でも、俺に話しかけているわけではなさそうだ。しかし、その声がいやらしい。
「あん…あっ…いく…」
行くってどこに!? しかも謎のあえぎ声。部屋が暑くて寝苦しいのかもしれない。しかしながら、エアコンのリモコンは離れた場所にあり、女神の横を通りすぎる必要がある。もし、万が一だが、俺が寝ていると思い、何かしらの神聖なる行為をしていたら、やはり失礼ではないだろうか。見て見ぬふりが一番だ。俺はしばらく声を聞いていたが、そのまま女神は寝入ってしまったらしく静かになった。しばらく、妄想に支配され、俺の脳内は熱くなっていたが、疲れと眠気が勝利した時、眠りに落ちたようだ。
朝になるといつも通り明るい女神がおはようと話しかけてくる。
「昨日暑かったか?」
あの声のことが気になり、確認してみる。
「昨日は怖い夢を見ていて苦しかった記憶しかないわ。あの世に連れていかれる夢。あの世に行く? と聞かれたから、行くのは嫌と言ったの」
「あの世が嫌ということは、お前はやっぱり幽霊じゃなく生きているのか?」
「そうだよ」
昨日の夜は夢でうなされていたらしい。そして、死にたくないということは生きている何者かだということは確認ができた。