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あれから二年。

小学六年生への進学を控えた冬。
褒められたり叱られたりを続けて、その日もなんとか私はステージに立っていた。
演奏後、(あせ)ってしまった私はお辞儀(じぎ)を忘れて、そそくさとドレスの(すそ)(つか)んで退場してしまった。
北会館のピアノコンクール会場内にため息が漏れていた。




「みおちゃん、テンポが練習より走りすぎだったわ。だから手が追いつかなくて途中で演奏が止まっちゃったのよ。出だしは良かったのに、残念ね……。課題曲が悪かったのかしら。」



いつもレッスンをしてくれてる先生はそう言い残し、他の教え子の元へと去って行った。

脱いだドレスからコートに着替え、帰りの車の中で「ごめんなさい」をママに繰り返すしかできなかった。
ママは運転しながら後部座席(こうぶざせき)の私に言った。




「……ピアノ、そろそろやめよっか。お金がもったいないわ。」



始まりがあれば終わりがある。諦めなければならないときもあると私は薄々(うすうす)気づいていた。