それ以来私のメトロノームは激しくずっと行ったり来たりを続けた。
彼とはその後の林間学校を隣で過ごし、学校に戻ってからは、私の上履きを間違えて履くような困った出来事を何度も繰り返した。
算数の発表で必要な水色のペンを持ってくるのをいつまでも忘れ、そのおかげでペアになることもあった。
内浜がくると、友達はそっと足音を消して去り、こちらを眺めているのがなんだか恥ずかしかった。
私も、もしものときのためにたくさんのカラーペンを持ち歩いて過ごしたものだ。
「内浜って乱暴しなくなったよね」
「何があったんだろう」
ふと休み時間、クラスメートからそんな声が漏れると、
彼は決まって陽気な鼻歌を歌いながら私の元へ駆け寄り、「げろげろ」と変顔をしてごまかしていました。
彼のいたずらは年々可愛くなっていきました。
それも、私限定の。
「男子って好きな女子にいたずらするって言うじゃん!内浜ぜったいみおのこと好きだよ!」
気がつけば、帰り道に友達二人が毎日持て囃してくれるようになった。
この気持ちの押さえ方が見つからなかった私は、浮ついた足取りのまま帰宅すると、
そのはけ口を、自分の部屋で待っているピアノにぶつけるようになった。
ポーン……
指で音を鳴らす度に私の心は撥ねた。
ド、レ、ミ、ファ、ソ、ラ、シ、ド……
彼の不慣れな指使いを真似して、ひと呼吸してから、
ピアノレッスン用の楽譜を開いて、
前より真剣に練習をするようになっていった。