すると、周りにいた男子がその背中を叩いて彼を呼び止めると、
こちらを指差して、いやらしい顔をしているのが見えた。
どうやら私の視線を勝手に察してしまったようで、
余計な報告をしてくれているようだ。
「モテ男は大変だなァ~。みおいいじゃん。告れば?」
次のチームの試合が始まるホイッスルが鳴ったとき、
その下品な声が女子の塊のこちらにまで聞こえてドキンとした。
だって、私はもう。
告って振られているのだから。
そうやって彼にちょっかいをかけたところで彼の気持ちはこちらにないことは分かっているのだから。
───やめてほしい。
すると彼は、分かった。と男子達に返事をし、
私の名前を呼んで、ぶっきらぼうな顔で言った。
「変な転けかたサンキュー。おかげで勝てたぜ。ピース!」
ブイサインをして
すぐさま、"にかっ"と笑って見せた。
そして「小便行きたくなっちった」、とけらけらして彼は体育館から去っていった。
「みおちゃんったら」なんてきゃあきゃあはしゃぐ友達が横に居ることを一時的に忘れていて、自覚すると恥ずかしくて顔が赤くなった。
───だけれど、すぐ彼を疑った。
それはどことなく曇った笑顔だった。