(あー、うん。わかりますわかります。なんだかんだ憎めないのは、こういうところですよね。本当、こう見えて律儀なのずるいと思います。ええ、切実に)
口にこそ出してはいないが、翡翠の心情が手に取るように伝わってきて全力でシンパシーを感じた。
やはり彼とは随所で共感指数が高い。
これはぜひとも仲良くさせてもらいたいな、としみじみしていると、二人は軽口を交わしながら部屋を出た。
「あれ? 翡翠様、もしかしてお帰りですか?」
「ああ。役に立たないのに長居をしても仕方がないからな」
ちょうど戻ってきたところだったらしく、廊下でばったりと鉢合わせた白火。
目元は赤く腫れあがっているものの、しっかりと涙と鼻水は洗い流されていた。
気持ちも少し落ち着いたのか、ぴょこぴょこと尾を揺らしながらついてくる。
「改めてだが、今回の件はこちらでも調査する。流獄泉を通して、ということは干渉してきたモノの実体はかくりよにあった確率が高いからな。どうせ俺の管轄だ」
「管轄……?」
「言ってなかったか? 翡翠も統隠局の官僚なんだよ。俺は高天原の神々関連を、こいつはかくりよに住まう神々関連のことを請け負ってんだ」
なんと、噂の統隠局の官僚様だったとは。
目をまん丸くした真宵を可笑しそうに一瞥し、けれどすぐに表情を引き締めて翡翠は少しばかり柳眉を下げた。
「真宵嬢。こちらの管理が杜撰なばかりに危険な目に遭わせてしまったこと、官僚・翡翠の名において謝罪しよう。此度の奴については、統隠局でも然るべき対応を取ると約束する。今しばらく待っていてくれ」
「い、いえそんな……!」
「事件解決まで不安は付き纏うだろうが……まあ心配せずとも、君のことは死んでも冴霧が守るはずだ。なにかわかり次第連絡するから、今は身体を休めて──」
それなら、と冴霧が割って入った。
「赤羅をつれていけ、翡翠」