神々の考えは、真宵の理解が及ばないことが多いのだ。

 しかし同時に真宵の考えは神々に理解されないし、これに関しては〝そういうもの〟だと思うしかない。

 この世界のモノではないのは真宵の方だから。

 けれども、さすがにここまで見抜かれているといたたまれないというか。

「騒がしくてすまんな、真宵嬢。今さらだが俺の名は翡翠という。こいつとは腐れ縁の友人で、まあはるか昔からこうなんだ。色事にはてんで疎い。許してやってくれ」

「なんでテメェが謝るんだよ。母親か」

「勘弁してくれ。おまえのような可愛げのない子どもなどこちらから願い下げだ」

 ああ仲が良いのだな、と真宵は半ば保護者のような気分で納得した。

 冴霧がここまで自分をさらけ出して喋る相手は珍しい。

 基本的に彼は他人に興味がないため、必要ないと判断すれば顔も名前も一瞬で忘れるような男だ。

 その冴霧がこうして──おそらくは、真宵のために頼った相手。

 友。

 そう呼べる相手が冴霧にもいたのだと思うと、無性に感極まってしまう。

「翡翠さまは神様、ですよね?」

「ああ、縁を司る神だ。もっとも、俺の定住地ははかくりよだが」

 かくりよ。

 そう聞くと一瞬【流獄泉】から流された罪人かと疑ってしまうが、もしそうなら今ここにいないだろう。

 つまり好んでかくりよに移り住んでいるのか。

 そんな真宵の疑問を察したのか、翡翠は苦笑する。

「体質的にどうも高天原の空気は合わなくてな。ちなみに向こうでは『柳翠堂(りゅうすいどう)』というよろず屋の主人でもある。なにか依頼があればある程度の事なら請け負うぞ」

「よろず屋……」

 変態だろ?と、冴霧がここぞとばかりに横槍を入れてくる。

 そんな友に苛立ったのか、翡翠が真顔で身を翻したかと思うと冴霧の横っ腹に容赦ない足蹴りをかました。