(ふふ、可愛い。もふもふ)

 そうしていると、まるで自分の子どもをあやしているかのような気分にもなってくるけれど、齢十九の真宵にこの歳の子どもがいるはずもない。

 というか、人から子狐に変化する時点で論外だ。

 真宵は妖の血など一滴も流れていない、正真正銘の『人の子』なので。

 この子狐は真宵の──正確には真宵の育て親、天利(あまり)の従者なのだ。天利からの命で真宵に仕えているため、実質、真宵の従者のようなものだが。

「ごめんね、白火。心配しなくても大丈夫だから」

「でも、でも、前に天利様がご飯を食べないと人の子はすぐに体を壊すと……」

「あはは、大げさ。ちょっと量が少なくなってるだけでちゃんと食べてるでしょ?」

 向かい側に座っていた冴霧が、真宵の言葉に一瞬だけ硬直したように見えた。

 しかしすぐにいつもの調子で、いかにも胡散臭そうな目を向けてくる。

「そいつ、ほんとに神使か?」

「御覧の通り神使です」

「とかいって、実は天利の隠し子だったりしてな」

「隠し子も何もこの子は正真正銘、かか様から生み出された子ですよ」

「うぬぅぅぅ! ぼくはっ! こう見えてもっ! 一人前の神使なのですっ!!」

 シャーッ!と全身の毛を逆立てて威嚇する子狐を、はいはいとなだめる。

 ちらりと冴霧へ視線を向けると、とくに興味もなさそうに茶を啜っていた。自分から話を振ってきたくせにとんだ自由人だ。人じゃないけど。