一口に加護と言っても、そう容易に出来るなものではない。

 契りを交わさずに業務外で一定量の神力を与え続けるのは、最高神にしか請け負えない仕事だった。

 彼女が真宵の義母になったのも、それが大きな理由である。

(その努力を無駄にしやがって……)

 冴霧は先ほどのことを思い出して、ふたたび不快感が舞い戻ってくる。

「だから急患だっつったろ。俺が一足遅れてりゃ逝っちまうところだった」

「むしろなぜ気づいた?」

「赤羅達が知らせてきたんだよ。真宵がいなくなったってな」

 主従の契りを交わしている冴霧と鬼たちは、離れていても意思疎通が出来るようになっている。

 『心通(しんつう)』──まあいわゆるテレパシーのようなものだ。

 契りを交わしている限り、伝心に限りはない。ゆえに今回のようにどうしても自分が傍にいれない時は、鬼たちを真宵の元へ置くようにしていた。

 一緒に過ごしてはいなくとも、いつでも助けられる距離に。

 しかし今回は、何か嫌な予感がしたのだ。

 だから片時も離れず、傍についているように命じた。

 今となっては英断だったと言える。

 仕事をすべて後回しにしてまで真宵を選んだおかげで、なんとか手遅れにならず助けられたのだから。

 まあ、他にも理由はあるのだが。

「……俺の計算では、天利が眠ってから真宵が存在を保てなくなるまで二年の猶予があるはずだった。あいつ自身もそのくらいだと言っていたしな」

「彼女が眠ってから何ヶ月経った?」

「半年ってところだろ。なのに真宵から神力がなくなるスピードが早すぎんだ。この間、真宵に会いにいった時の感覚ではもうすでに残り半年程度まで減ってた」

 一年半。

 一年半分、減りが早いのだ。

 それはどう考えても異常で、冴霧にとっても想定外だった。