「こんりゃあ珍しい。鉱麗珠(こうれいじゅ)だべ」

「鉱麗珠?」

「かくりよの産物で、滅多に手に入らないとされている貴重な鉱石さね」

 あー、と赤羅が思い出したようにポンと手を叩いた。

「前に主はんが探しとったやつやん、それ」

「えっ、そうなの?」

「オレらも介入させてもらえんかったから、何に使うのか詳細は知らんけどな。結局は手に入らんくて諦めたみたいやで」

 あの冴霧が手に入れられないほどの代物?

(え、もしかしなくてもこれ、結構やばいものだったりするの?)

 手のひらに乗せたブレスレットを凝視する。

 落としてはいけないという気持ちと投げ捨てたいという気持ちが交錯した結果、真宵は静かに箱の中へ戻した。

「まあ、なかなか手には入らんなあ。裏取引でさえ滅多にやり取りされることはねえし、あったとしても相当な高値で売買されていると聞く」

「そ、そんな貴重なものをどうして私に……!?」

「さあ、相手方は御守りだって言っていたがねえ。んま、大した意味はなく、ただ友人の娘が心配になったんじゃないかね? そういうもんだろう」

 だが母は、最高神と崇め奉られるあの天照大神だ。

 名ばかりの友人と称を持つ神や怪はいくらでもいるし、真宵とてその全てを把握しているわけではない。

(うーん、わかんないや。そもそも私、あんまり関わらせてもらえなかったしなあ)

 神々は癖が強いものが多いからと、真宵が気兼ねなく話せる相手は限られていた。

 よって、個人的に関わりのある神々ならば数はそれほど多くない。その筆頭を飾るのは、言うまでもなく冴霧だが──。

「……あの、一応お聞きしますが、冴霧様ではない……?」

「ああそりゃあ違う。もし冴霧様だったら赤羅くんが知っちょるだろう?」

「あ、ですよね」

 ホッとしたような、ちょっと残念なような。