情報屋という認識からそうかなとは思ったけれど、もしかしてそちらの方が名が通っているのだろうか。
神々も副業の時代なのか、と真宵はひとり納得する。
「そりゃあもう、オラでお役に立てるのならいつでもお呼び立てくだせえ」
「頼むわ。んで? お嬢になんか用やったんやろ?」
「ああそう、そうだったそうだった」
思い出したように手を叩いた山峰は、その場によいこらと腰を下ろす。
慌てて真宵は中へ入るよう促すが、「いんやここで」とへらりと首を振られてしまった。
「で、でもそんな地べたに……」
「真宵嬢にお届けもんがあるだけさね。すぐ終わるけ、ここで充分」
「お届けもの、ですか?」
「ん、仕事の取引相手なんだがな。天照大神の友人っちゅうもんから、匿名で真宵嬢に渡してほしいって頼まれたんでさ」
山峰はそう言いながら、持っていた風呂敷を胡坐の上で丁寧に解き開ける。
中から出てきたのは、色味艶やかな漆塗りの小箱だ。
大きさは手のひらほど。蓋の表面には金箔と金粉がふんだんに散りばめられており、表面には牡丹の花。
周囲を縁どるようにしっかりと描かれた紋様は、見たことがない不思議な形をしている。
真宵はその場にしゃがみ込んで、まじまじと小箱を覗き込んだ。
「これは?」
「オラも中身は知らんが、まあ開けてみい」
ほれ、と手渡され、反射的に受け取ってしまった真宵。
いかにも高級そうな重量感に躊躇しながらも、そっと蓋を開けてみる。
「ブレスレット……?」
丹色の敷物に包まれていたのは、なんとも筆舌に尽くしがたい不思議な天珠が連なったブレスレットだった。
恐る恐る持ち上げてみれば、光が当たる度に色が変わる。
それを見た瞬間、山峰が「ほお」と驚嘆の声をあげて目を見張った。