「オレらが言ってええもんやろか、蒼ちゃん」

「……どうせお嬢には隠し事など出来ないでしょう、あなたも私も」

「んー、まあなぁ。……あんなぁ、お嬢。主はただ心配なだけなんよ」

 はて、心配とな。

 真宵が目を瞬かせると、赤羅はううんと唸りながら困った顔をする。

「ああ見えて、ほんまに主はんはお嬢のこと大事にしてるんやで。忙しくなかったら、自分が四六時中一緒にいたいって思っとるし。せやけどそれが叶わんから、せめてもの妥協案でオレらに守らせてるってだけの話でな」

「高天原内にいればお嬢に何かあった際すぐ駆けつけられますが、さすがにかくりよからは多少の時間がかかりますからね。でも本当に渋々という感じでしたよ」

「大げさやって思うやろ?」

 蒼爾の腕の中から抜け出してきた白火を抱き上げながら、真宵はおずおずと頷く。

「そら、オレらも今日ここに来るまでは過保護やなって思っとったけどな。でも、いざお嬢の気の薄さみたら、そりゃあ心配になるのも分かるっちゅうもんや」

 ──『気』。

 ああなるほどな、と妙に納得してしまうだけの知識があるのが恨めしい。

 つまるところ、真宵の体から発せられる人の気──いわば生の香りが限りなく薄れてきているということだろう。その時が刻一刻と近づいている証だ。

 クゥーンと悲し気に鳴いた白火が、真宵のお腹にぐりぐりと頭を擦り付けてきた。

 そうだそうだ、とでも言いたげに。

「うーん、そうか」

「お嬢はあいかわらず淡々としてますね。さっき取り乱したのはもしや演技ですか」

「失礼な。私だってたまにはああいうこともあるよ」

 とはいえ、あれほど取り乱したのは、単に自分が覚えのない行動をしていたからというだけではない。その前に見ていた夢が関連している。

 でもそれは言わないでおこう、とそっと胸にしまうことにした。

 なんとなく、このふたりに言ったら全て冴霧にバレる気がしたので。