(なんというか……ここまでくるといっそ可愛いなあ。うん、冴霧様がセッちゃんと蒼ちゃんを大事にする気持ちもわかるよね)
真宵は堪え切れず笑ってしまった。
「大丈夫、知ってたよ」
鬼たちは同時にはあ?と言わんばかりに鳩が豆鉄砲を食ったような顔をする。
思わぬ方向から衝撃を受けて理解が追い付かないのか、それはもう食い入るように、いっそ穴が空きそうなほど真宵を凝視してきた。
「いや、そんな詳しい内容とかは知らないし、はっきりとじゃないけど。冴霧様がなにか危ないことをしてるっていうのは……なんとなく?」
「……それは……」
「冴霧様って何も言ってくれないくせに、ときどきちょっと抜けてるんだよね」
昔から──極稀にではあるけれど、冴霧の服に返り血がついていることがあった。
いやむしろ、そういう時に限って、冴霧は真宵の元にやってきていた。
血を拭い忘れるのは、それほど余裕をなくしていた時。心身共に追い詰められていた時だ。
なぜ、そんな状態で真宵に会いに来るのかはわからない。
幼い頃は怖がらせたいのかと警戒したものだが、しかしいつの頃からか、そうではないのだなと気づいた。
なんてことのない顔をして、いつもと同じように真宵の名を呼びながら、光を忘れた瞳を向けてくる。
そんな冴霧をなんて危うい人だろうと思いながらも、何も気づいていないフリをし続けてきた。そのツケがきっと今きているのだろう。
「でもそんなに忙しいならなおさら、なんでふたりを私のところに?」
いつの間にか子狐姿で蒼爾の膝にちょこんと座っていた白火を呼びながら、真宵は首をかしげた。囲炉裏の中でパチパチと火花が数発弾ける。
「統隠局に行くのだって別に初めてじゃないし。今までそんなことなかったよね?」
「……あー、まあ、そうなんやけど」
赤羅は言いにくそうに斜め上の方へ視線を彷徨わせながら、指先で髪を遊ばせる。