(神様と妖怪が契るってこと自体、あんまり前例はないみたいだけど……)
実際、主従関係において神と他種族は相性が悪いと言われている。
そのため、神々の従者は基本的に己の神力から生み出した分身──白火のような神使が一般的だ。
別個体の魂を持ったモノと契りを交わすなど、よほどの変わり者がすること。どうやら神々の間では、そういう共通認識があるらしい。
「セッちゃんと蒼ちゃんも、やっぱり忙しい?」
「ここ数年は特に、ですね。ひっきりなしに仕事を言いつけられますよ」
「んなぁ。せやけどしゃあないんや。かくりよと同じで高天原もだいぶ治安が悪うなっとるから。主はん荒事担当やし、なにかと──……あっ」
赤羅が慌てたように口を押さえる。どうやら言ってはならないことを口走ってしまったらしい。
蒼爾が額を押さえて項垂れながら苦言を呈した。
「……赤羅。おまえはどうしてそう迂闊なのですか」
「ごめんて。つい口がぽろっとな」
「主にバレたら確実に首が飛びますよ。私は庇いませんからね」
そんなぁと、赤羅が鬼らしくもない情けない顔をする。
首が飛ぶほどの隠し事とは、またずいぶんと穏やかでない。荒事担当とはなんとも物騒な響きの言葉が飛び出したな、と真宵は心の中で思った。
「荒事かあ……」
「あ、荒事と言っても場によりけりですよ。主の身に危険が及びそうな場合は私たちがお守りしますし、対神なら主が負けることはまずありませんから──」
「へー……そこまで危険な仕事もあるんだ」
「……蒼ちゃん墓穴掘っとるやん」
赤羅と蒼爾はあからさまに目を泳がせる。
こうなればもう余計なことしか出てこないと判断したのか、ふたりはアイコンタクトを交わすと唇を引き結んでしまった。
黙り込む鬼たち。
白火はふたりを交互に見ると、最後に真宵の方を向いた。どう反応するべきか見極めかねているらしい。
さて、どうしたものか。