「今は主はんが天神会を背負ってるようなもんやしな」
「そう、だよね」
現在の天神会は代表が『休眠中』という非常事態。
必然的に、次手の冴霧へ仕事が回ってしまっているのだろう。
それもこれも、元凶を辿れば全て真宵が原因だ。考えただけで気が重くなるが、仮にも従者の目前、なんとか顔には出さないよう努める。
「官僚務めは天神会からの派遣仕事のようなものですしね。かくりよには高天原に上がられていない神々も多く住んでいるので、細やかな連携は必須なのですよ」
「……かくりよに住んでる神様って、住民票どうなってるの?」
「完全にかくりよへ移している方もいらっしゃれば、高天原に登録したままのらりくらりと旅をしている方もいらっしゃいます。適当です、そのへんは」
驚くほど自由だ。さすが神様、と真宵は半ば呆れ気味に笑った。
それに比べ、冴霧ときたら仕事仕事仕事。寝ても覚めても仕事尽くし。
昔から真宵が会いたいときに会える相手ではなかったが、にしても最近は働き過ぎでは。
「冴霧様ってお休みなさそうだよね」
「現在の高天原では一、二を争うほどお忙しいですからね。本来は下っ端へ回されるような雑事まで仕事を請け負っているので、丸一日休みという日はなかなか」
「ま、大抵そういう細っちいのはオレらに押し付けられるんやけどな」
「ふぅん……」
赤羅と蒼爾は、怪でありながら神と契りを交わしている特殊な存在だ。
高天原は神々の世界。天神会で認められた例外を除き、外部の者が出入りすることは許されない。
それは怪も同様。彼らが立ち入ることを許されているのは、あくまで神の従者という肩書を正式に持っているからである。