「……意識がない状態であの場まで?」
「うん。白火の声で起きた」
「ふむ──症状的に似ているのは夢遊病でしょうか。これまでにこのようなことは?」
真宵はまさかと首を横に振る。
寝ている間に自分が知らない行動を取っているなんて、そんな気味の悪いことが頻繁にあったらたまったものじゃない。
あの不可思議な夢はさておき、目覚めた時に布団の中にいなかったのは、間違いなく今回が初めてだ。
赤羅がぽりぽりと頬を掻きながら、怪訝そうに首を傾ける。
「蒼ちゃんなんやねん、その夢遊病っちゅうもんは」
「簡単に言えば、眠っている間に体が勝手に動いてなにかしらの行動を起こす病ですよ。ほとんどの場合、その間の記憶はないと言いますね」
「うわ、んなけったいな病があるんか。なんや気色悪い病やなあ」
真宵もその病については地上に伝わる文献で見たことがあった。確かに症状的には重なる部分も多いし疑えなくもない。
だが、たしかこの病は──。
「……夢遊病の発症年齢って」
「三歳~九歳ほどの小児ですね。稀に成人を過ぎた者にも現れるらしいですが」
その『稀』には含まれたくない。切実に。
「九歳も十九歳も、んな変わらんやろ」
「我々の感覚ではね。人の子には大きな差ですよ。……まあいずれにしろ、原因はストレスが多いと聞きますが」
三人の視線が真宵に集中する。
揃いにそろってなんとも言えない顔だ。真宵自身どう反応したら良いのか分からず、眉尻を下げて三人を見つめ返した。
ストレス?
そんなものあるに決まっているだろう。
「あー……ところで、ふたりはなんで朝からここに?」
ひとまず話を変えようと、真宵は勢いよく方向転換を決める。