「ところで、さっき医者がなんやって叫んでたやろ。お嬢具合でも悪いん?」

「うぅぅ~~……そ、それが、いつの間にか起きていた真宵さまがどこかへ行こうとしていたので、ぼく、慌てて呼び止めたんですが……」

 ちらりと白火が真宵を見て、さらに目を潤ませる。

「裸足だし、寝巻きだし、何度呼びかけても反応がなくて──これはおかしいと思ったら、ようやくぼくに気づいてくれて……。でも、でも、その直後、混乱されたようにその場に崩れ落ちてしまわれたんですぅっ!」

 うわぁーん!と、とうとう白火が泣いた。

 蒼爾がおやおやと白火を抱き上げる。

 膝の上にちょこんと座らせられた白火は、蒼爾の羽織に遠慮なく涙と鼻水でいっぱいの顔を擦り付けた。

 ピシッと蒼爾が硬直するが、あの状態の白火に手を出せばそうなるのは当然だ。諦めて洗濯してほしい。

(っていうか、やっぱり私……)

 真宵はそこで初めて、白火が自分を連れ戻してくれたのだと悟った。

 あのとき真宵は、確かに白火の声に引き寄せられるように夢の世界から戻ったのだ。

 意識のない状態で体が勝手に動き、しかも寝室から玄関まで移動していた──それがはっきりしてしまえば、いっそう恐ろしくなってくるけれど。

「顔色は良くないですね。隈も酷いですし」

「んんん、熱はないみたいやけどなぁ。風邪でも引いたんか?」

 真宵は説明しようか迷った。

 けれど、どうにも確信がない。

 何よりようやく落ち着いてきた今、自分がだいぶ恥ずかしいことをしていたような気がしてきた。

 そそくさと赤羅の膝から降りて、対角上にある座布団に座り直す。

「ごめん……たぶん、寝ぼけてただけだと思う」

「寝ぼけてたぁ?」

「わ、わかんないけど、気づいたらあそこにいたの。だからびっくりして」

 そうとしか言いようがないのだが、自分でもわけがわからないと思った。

 赤羅たちも困ったように顔を見合わせている。