「お、目ぇ覚めたか? おはよーさん、真宵」
──切実に問いたい。
普通の人の子は、目覚めた瞬間この世の神秘を一緒くたにしたような顔と遭遇した場合、はたしてどんな反応をするのが正解なのかと。
ちなみに真宵は、至極冷静に夢の中であろうと判断した。
なのでひとまず今日の朝ご飯は焼き魚が食べたいな、と全く別のことを考える。薄らと開けた瞼をそっと下ろし、どうせなら漬物もつけようと朝食に思いを馳せた。
しかし、この男はそんな苦し紛れの現実逃避すら許してくれないらしい。
「おい、また寝んのか? 未来の旦那を前にしてつれないやつだな」
声の主は拗ねたような声を落として、真宵の頬をむにむにと摘んでくる。やめてほしい。そんな直接的に攻撃を加えてくるアラームなど設定した覚えはない。
というか、なぜここにいるのだろう、この男は。
「……冴霧様」
「あ、起きた」
「神ともあろう者が夜這いですか。というか、不法侵入ですよね。叫びますよ」
パチリと目を開けて、間近で見下ろしてくる美丈夫を冷たく睨みつける。
否、決して夜這いではないと分かってはいるけれども。
この男──冴霧は、褥で行儀良く眠っていた真宵の横にぴったり張り付いて、自らも横になっているだけだ。
立てた腕に頭を預け慈しむように真宵を堪能する様は、傍から見れば、まるで子どもを寝かしつけているような健全さだろう。
一応、布団の中で手を動かして衣服を確認したが、とくに寝る前と変わらない。
これがはだけているとか、はたまた下着をつけていないとかだったら話は別だが、皮肉なことに冴霧はそういうことをしない男だ。とりわけ、真宵に対しては。