「……困っちゃうよねえ」
向こうにその気がないのなら、真宵だって受け入れられない。
真宵がいくら冴霧に想いを寄せていても、そんな一方通行な結婚をするくらいなら、いっそなんの想いも抱いていない相手と結婚した方がまだマシだ。
まあ絶対、しないけど。
「真宵さま……」
「ふふ、でも面白いでしょう? 私の体から神力が尽きて限界を迎えるか、かか様が煩さに耐えかねて起きてくるか、知らない人と結婚するか、冴霧様に無理やり娶られるか──笑っちゃうくらいイタチごっこで」
ああ、いやだ。なんで私は人間なんだろう──。
もう何度思ったか分からない言葉を胸の内で繰り返して、真宵は立ち上がった。
「さてと、帰って夕飯にしよう」
「っ……は、はい」
いっそ、自ら全てを捨ててしまおうか。なんて、一瞬闇深い考えが浮かんだことに自嘲しながら、真宵はゆっくりと天岩戸に背を向けた。
「ねえ白火、今日は白火の好きなお稲荷さんにしようか」